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ENYA45Sを使いこなそう その2 慣らし運転のための準備

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ENYA45Sは、新品のまま、ノーマフラーでテストベンチで大きなプロペラを用いて慣らし運転を開始する。
というのが、昔のセオリーでした。
理由は簡単で、エンジンの回転が渋いので、始動しやすい重い大きなプロペラでなんとか始動しやすくする、というものです。
もちろん、濃いニードルで数分回せば、ある程度始動しやすい程度に渋さを取れるのですが、そのまま慣らし運転を継続すると、ブレークインからあっという間にブレークアウト(スカタン)になりますね。
それを回避するために、次に、負荷の軽いプロペラで慣らし運転を開始するのですが・・・・
 
そこで、大きなプロペラで回してアタリを取る工程を省略する加工(ラッピング)を実施することになります。
また、実際に運転で使用する状況のパーツ(マフラー等)の取り付けも行います。
 
ただし、この作業を実施するにあたっては、エンジンを壊してもよい、という覚悟を持てる方、エンジンを壊す覚悟で何台か分解整備を行って、きちんと使いものになるエンジンを仕上げてきたスキルのある方が対象となります。
エンジンを壊しても良いと考えない方は実施しないでください。
また、この方法でエンジンを壊したり調子を悪くしたりしても、当方では一切の責任は持てませんことをご承知おきください。
 
ラッピングの目安は、現代の、テストベンチでの慣らし運転が必要ないエンジン程度にする、ということになりますが、これは、言うは簡単ですが、実施するのは難しい、ということになりますね。
ということで、エンジンを歪めずに、きちんと分解整備できるスキルがあることを大前提として、素人工作の範囲で、できる限りのことを行う、という方針で作業を進めます。
もちろん、素人工作ですので、あたりまえにテストベンチで慣らし運転は行わないといけないことになります。
仮に、 現代の、テストベンチでの慣らし運転が必要ないエンジン程度まで加工が可能であれば、あなたは、メーカー並の技術を持っていることになります。
そうなれば、すばらしいのですが・・・・無理ですね。
 
過去に調子の悪いENYA45Sを何台か分解整備したことがありますが、例外なく、クランクシャフトの回転が渋い状態となっていました。
通常の慣らし運転では、なかなかスムーズに、密閉性を保ち、適切なガタで仕上がりにくい傾向があるようです。
ということで、ENYA45Sについては、クランクシャフトとフロントハウジングのアタリをラッピングで、ある程度アタリを取ることは有効な手段と思われます。
当然、ボールベアリング入りエンジンや、現代のエンジンでは実施する必要はありませんがね。
ENYA45Sの場合、クランクシャフトの渋さがPCセットやコンロロッドに余計な負荷をかけながら慣らし運転を実施する結果となって、温度上昇や過負荷により適切に慣らし運転が終了しない傾向があったように思われます。
 
ということで、クランクシャフトの研磨を実施することとしました。
クランクシャフトとフロントハウジングは比較的簡単に分解、組み立てができ、またラッピングも比較的簡単です。
 
 
以下、手順と注意点です。
 
1)フロントハウジングの分解
フロントハウジングは比較的歪みなく分解整備ができる部分ですので、パッキンを破らないように注意してフロントハウジングを外します。
ドライバーは、プラスネジの頭にぴったりのものを用意してください。
ここで、サイズの異なるドライバーを用いると、ネジの頭を潰しますし、正しく絞めることができないので注意が必要です。
クランクシャフトはドライブワッシャーを一旦外して抜きます。
外し方は、クランクシャフト先端にプロペラナットを取り付けてネジがつぶれないようにしてから軽くプラスチックハンマーで叩くと抜けます。
 
2)ラッピングを行う
ラッピングとは、すり合わせを行う、ということです。
抜けたクランクシャフトとフロントハウジングの接する部分にコンパウンド(中目)を少量つけ、クランクシャフトをフロントハウジングに差し込みます。
このとき、軸方向に真っ直ぐ差し込むことはしてはいけません。
かならず、回転させながら差し込みます。
軸方向の傷は、後々でオイル漏れや圧縮漏れを誘発することになるためです。
軸に直角や斜め方向であれば、それらを誘発しにくくなります。
私は、ここでクランクシャフトの先端をボール盤に取り付け、フロントハウジングを手に持って、ボール盤を低速で回転させてラッピングを行いました。
指先で感じるフロントハウジングの温度上昇に気をつけながら、暖かくなる前に回転を止めて掃除するようにします。
コンパウンドは、黒いカスとなりますから、何度か掃除しながらコンパウンドをつけて磨きます。
このとき、フロントハウジングが逆樽型になるように気を使いながら削るのがコツです。
とはいっても、簡単に人間が認識できるものではないのですが。
逆樽型になるように磨くことは、RGモルトン氏の「Uコン技術マニュアル」(Uコン技術誌創刊号、2号がその内容となっています)に理由が記載していますので、一読をオススメします。
コンパウンドは、キャブレターから供給すると真ん中が削れやすいので、それは行わない、という注意で問題ないと思いますが。
ある程度ラッピングを実施すると、スルスルとクランクシャフトが回るようになってくるので、コンパウンドを、細目、極細目と順番に変更しながら磨き上げます。
どの程度、削るのかって?
文章では、なんとも表現できません。
すみません。
 
3)洗浄する。
コンパウンドの粉を綺麗に洗浄します。
洗浄は、洗剤の入った水で実施しています。
歯ブラシや刷毛を用いて表面を撫でて、きれいにします。
最後はたっぷりの水道の流水で洗い流します。
その後、すぐにタオルで水気を丹念にふき取り、すぐにストックオイルを全体に塗り錆を防止します。
 
4)ラッピング後の確認
ストックオイルを注した状態でボール盤を用いてクランクシャフトを回してみます。
このとき、フロントハウジングとクランクシャフトの間から黒いオイルが染み出さなければOKです。
まだ染み出してくるようであれば、2)に戻ってラッピングを繰り返します。
なお、削りすぎについては、この段階でチェックする方法が見当たりません。
もし、削りすぎてしまったら、スカタンエンジンを作成したことになったことになるので、
残念でした、という結果になるだけです。
この辺は、経験を積んでころあいを見計らうしかないでしょう。
 
5)組み立て
クランクシャフトをフロントハウジングに差し込みます。(必ず回転させながら挿し込んでくださいね)
クランクシャフトのクランクピンをコンロッドのビッグエンドに差し込んで、パッキンを挟むようにして、フロントハウジングをクランクケースにネジ止めします。
ネジは、軽く当たる程度で一旦絞めるのをやめ、クランクシャフトを回します。
このとき、回転の渋さを確認して、問題なければ、ネジを増し締めします。
ネジは、必ず対角線上の向かいのビスを絞めるようにして歪みが発生しないように注意してください。
ネジの締め具合は、文章では表現できません。
(自動車等の整備ではトルクレンチを用いて、?Kgで締める、なんてことになってますがね)
適度に絞めてください、ということになるのでしょうかね。
ここで、またクランクシャフトを回します。
ここで回転の渋さに変化があり、渋くなった場合は、ネジの締め方がまずいことになります。
ネジを緩めて、もう一度絞めなおしてください。
ネジをきちんと締めることができて、シャフトを回転させても渋くなっていなければ完成です。
このとき、うまくいかない場合は、各種問題があるはずなので、きちんと対処することが大切です。
ここでは、トラブル事例を紹介はしませんので、個別で対処願いますね。
 
 
このほかにもラッピングを行うところは何箇所かありますが、その方法については省略いたします。
各地域にエンジンの分解整備が得意な先輩の方々がいらっしゃいますから、その方々に問い合わせをしていただいたほうが良いと思います。
文章では、やはり表現が難しく、再現性が低いことと、エンジンを壊すリスクが非常に高いので、ここでの紹介はこのへんにしておくこととします。
 
なお、今回、慣らし運転前に分解してラッピングを実施しましたが、一旦、テストベンチでの慣らし運転を開始したら、分解することなくエンジンを仕上げる方針となっています。
慣らし運転最中や使用後にエンジンを分解すると、エンジンを歪める要因となりやすいためです。
歪みが出たら、その分、エンジン内部の稼動パーツが痩せてきます。
ということは、一歩、スカタンに近づいたことになりますからね。
 
何度でも、歪みなく正確にエンジンをくみ上げるスキルがつくまでは、分解を行わないほうが無難です。
必要になったら、メーカーに送って修理してもらうことをオススメします。
もちろん、有償になることは理解しておいてください。

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