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エンジンをなんとかしよう その4 慣らし運転は、いつ終了するのか?

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Uコン談義でエンジン慣らし運転のお話になると、お定まりの話題は、
「このエンジンは慣らし運転で8リッターも回したよ、おかげでとても調子よく回ってくれるんだ」
なんて、得意話でしょうかね。
たしかに、飛行機を飛ばさずに、8リッターもの大量の燃料をテストベンチで回すには、それにかかる時間、労力、苦痛(間近で聞くエンジンの音はすごいですからね)は大変なものになりますね。
これはこれで、尊敬すべきお話でもあり、苦労についてねぎらってやるのがUコン仲間の心遣いになるのですが。
 
 
では、いったい、「慣らし運転は、いつ終了するのか?」という疑問が残ります。
慣らし運転の目的を以下に、いくつか示しますと
1)エンジンのすり合わせの適正化
エンジンが快適に運転するために、エンジン内部のわずかなすり合わせの不具合を適切に削り取り、運転時に発生する運転摩擦を最小にするようにすること、になりますかね。
2)エンジンの扱いに慣れ、調整を確定し、品質を確認する
エンジン運転の特性や癖を理解し、これに慣れる、技術を習得することができますね。
また、運転状況を確認して、調整を行い、品質に問題ないことを確認できます。
 
 
ここでは、2)は省略して1)をメインに考察してみたいと思います。
 
 
エンジンのすり合わせの適正化は、どのレベルで実現すべきか?は、
実際に使用する範囲で、多少、負荷が増しても問題のない状態、ということがいえます。
もちろん、実際に使用する範囲とは、そのエンジンの持っている適切な能力の範囲、であり、無理な運転や負荷は論外、ということになります。
よって、最終的には、実際のフライトで、エンジンが生き生きと回り、かつ、機体が生き生きと飛ぶことが、成果となりますね。
 
ここに行き着くまでには、いくつもの落とし穴があり、この落とし穴に落ち込まないようにするのが、模型エンジンを扱う上での醍醐味とでもなるのでしょうかね。
 
さて、エンジンのすり合わせの適正化の観点で落とし穴を以下に説明しましょう。
 
1)金属は熱により「成長」を行う。
ここでいう「成長」とは、金属は熱せられ、その後、冷えたときに
「もとの形、寸法にもどらない」
ということです。
ピストンの場合は、大抵、膨張します。(直径が、わずかですが太くなる)
この現象は、特に、鉄ピストンで顕著に発生します。
ちなみに、「成長」を確認できない素材のピストンもあるようです。
 
2)金属は熱や力により変形する。
エンジン運転中は、熱や力が発生しているので、常に変形しています。
新品のエンジンは、正確に「公差」の範囲に収まるように加工されていますが、変形すれば、当然、正確な形状ではなくなります。
公差:許容される寸法差
また、公差の範囲であろうとも、適切なすり合わせになっているのか?というと、充分ではなく、
だからこそ、慣らし運転で適切なすり合わせにする必要があります。
公差の範囲とは、将来的に慣らし運転で適切なすり合わせとなるであろう範囲である、と考えることができますね。
 
3)金属は、削られることで、だんだん痩せてくる
適切なすり合わせになるように削られや痩せるのはかまいませんが、変形して痩せてしまったら、取り返しがつきませんね。
もっとも、1)で説明した「成長」させてやり直し、はある程度期待できるところでもありますが、そうでない場合は、パーツを交換するしかありません。
こうなったら、慣らし運転は失敗した、パーツ交換してやり直し、という結果となってしまいます。
 
4)オイルのスラッジが悪さをする
オイルは許容範囲の力、温度では問題なく機能しますが、許容範囲を超えると、焼け焦げ金属表面に付着することになります。
これは、焼けたエンジンを分解等するとすぐわかりますが、黒っぽい色で金属にへばりついています。
この金属にへばりついたスラッジは、金属の熱の伝導を不均一にし、結果、運転時に金属を歪ませて膨張させることになります。
実際の運転温度で、それでも適切なすり合わせになっているのであれば問題ないのですが、やはり、適切なすり合わせになりにくい要因であることは確かでしょう。
 
5)クランクケースの歪みが、新たなすり合わせを行う必要性を生み出す。
クランクケースはアルミ合金でできていますが、エンジン内部の金属パーツに比べ、はるかにやわらかい材質でできています。
よって、ちょっとした扱いの悪さで変形してしまいますね。
実際の使用場面を考えると、エンジンマウントのゆがみ、カウリング等がシリンダーに触れている等でしょうか。
テストベンチで調子よく慣らし運転が終わったのに(他の機体に搭載して問題なかったのに)機体に搭載したとたんに調子が悪くなる、なんてときは、この疑いをもって対処すると良い場合があります。
クランクケースの歪みは、内部の動作している金属パーツの相対位置の狂いや、すり合わせの具合が変わってしまいますからね。
また、エンジンの分解では、ネジのちょっとした締め具合の加減でクランクケースがゆがみます。
よって、慣らし運転を開始したらエンジンは分解しません。
もっとも、必要に迫られて、エンジンを分解することになったら、慣らし運転のやり直しを行うことになります。
たとえば、慣らし運転中にエンジン調整に失敗してオイルが焼け焦げた、なんてときは、分解整備するしかありませんからね。
 
6)燃料が変わるとエンジン運転温度が変わる
エンジンの運転温度が変わると、それに伴い、金属の膨張度合いが変わります。
当然、適切なすり合わせから外れてくる可能性があるので、注意が必要です。
よって、エンジン慣らし運転では、燃料をむやみに変更するのは避けるべきと考えられます。
とはいっても、下ろしたてのエンジンですり合わせがとても硬い場合は、慣らし運転の初期の段階では、あえてオイル含有量の多い燃料で回す、なんてことはありますがね。
もっとも私の場合は、エンジンをばらして、あらかじめすり合わせ調整を行うことで対処するほうが多いですが。
(初心者の方にはオススメできません)
 
 
 
これらの落とし穴をさけて、適切に慣らし運転を行うにはどうしたらよいのか?
なにも知らずにこの問題を解くのは、まるで、複雑なパズルを解くような難しさになりますね。
 
ということで、答えは
「KMCO ゼロ戦で「挑戦!!」 その14 ENYA Quicky09S テストベンチでの慣らし運転」
http://blogs.yahoo.co.jp/jpn33f134043/25809183.html
「KMCO ゼロ戦で「挑戦!!」 その16 機体に搭載してのブレークイン」
http://blogs.yahoo.co.jp/jpn33f134043/25834669.html
となります。
もっとも、Uコン技術誌やエンジン取り扱い説明書に記述されている手順に従って実施していることになりますが、
先人が苦労して、このパズルを解いていったのだと思うと、ありがたいお話ですね。
 

で、慣らし運転は、いつ終了するのか?
ですが、
実用で用いられるエンジンの運転状態よりも多少負荷の高い状態で適切なすり合わせになっていることを確認できたら。
となります。
 
 
では、どのようにしたら、その認識にいたるのか?
ですが、適切なすり合わせになっていない場合は、常に2サイクル運転が多く、エンジン運転温度が高めになっているようではだめです。
(要するに焼けた状態で常に回っていることを示します。)
燃料タンクの燃圧変動に適切に反応し、上昇のときに回転があがり、降下の時に回転がさがる、つまり、実質的にニードルを空けたり閉めたりするのと同様に適度に燃圧変動に回転数が変動するのが良いと考えられます。
ただし、適切な負荷で、ニードルセットが適切である場合に初めて実現することなので、単純に慣らし運転が終わっているのかどうかの判定はできますが、この状態への調整が難しいところはあります。
また、エンジンがスムーズに止まらない場合も、まだ、ランニングインが完了していないと判断できますね。
 
 
で、これも、また、パズルを解くような難しさになりますが、これを認識する方法が、ニードルとエンジンの回転の追従性を確認する(特に空けたとき)
となります。
グロープラグは点火タイミングは機械的(電子制御等)で行っているわけではなく、あくまでも自然発火に任せています。
この発火タイミングはエンジン運転温度が大きく影響するようで、
運転温度が高い->早く点火する->回転が上がる
運転温度が低い->遅く点火する->回転が下がる
ということになります。
 
すり合わせが悪く、摩擦熱のより運転温度が上昇する現象は、あらゆる機会で経験することができます。
慣らし運転であれば、4サイクル運転でニードルを一定にして連続運転している工程で、徐々にエンジンの回転数が下がってきます。
(回転数にして、500回転程度ですが。 また、最近の加工精度が高いエンジンは、この現象が出やすいようです)
これは、すり合わせが適切になってきて、摩擦熱の発熱量が下がってきて、結果、運転温度が下がってきていることを示しています。
逆に、それほどまでに摩擦熱の影響は大きい、とも考えられますね。
 
 
ここで、エンジンが焼ける現象が出ると、運転温度がニードルを空けて運転温度を下げようとしても容易に下がりません。
よって、
運転温度が高い->早く点火する->回転が上がる
という状態が続き、なかなか回転が下がらないようになりますね。
ところが、エンジン回転により、少しずつエンジン内部の金属パーツを削り取ることで、適切なすり合わせになってきます。
結果、適切なすり合わせになった段階で、ニードルとエンジンの回転の追従性が良好になってきます。
 

ただ、適切なすり合わせの状態で削るためには、オーバーヒート状態では無理なので、そうでない状態で削るしかありません。
オーバーヒート状態では、エンジンは歪んで膨張していますからね。
また、「金属は成長する」という性質がありますから、何度かに分けて穏やかに成長させて適切に削り取る、という工程が必要になります。

 
そのために、4サイクル運転と2サイクル運転を繰り返し実施することになります。
2サイクル運転->運転温度が高い->金属が膨張する->ここでの削りこみは最小にする
4サイクル運転->運転温度が低い->金属が縮小->成長を確定させる->削り取る
金属の成長は、穏やかに実施させて削り取ることを行わないと、エンジンをお釈迦にします。
運転温度の限界は、実際に飛行させる運転温度よりも、絶対に上昇させてはいけない、と考えることができますね。
また、金属の成長は何度も実施しないと成長を繰り返します。
よって、金属の成長が止まったことを確認するまで、繰り返し、根気良く実施することになりますね。
 
また、ニードルは、何度も段階的に絞り込んで運転温度を上げる必要があります。
ですから、根気良く、2サイクル運転と4サイクル運転の繰り返しを行い、2サイクル運転で、よりニードルを絞るところに到達するように注意しながら行います。
この段階で、理想を言えば、フライト時の運転温度まで上昇させて慎重にアタリがとれればよいのですが、限界はあります。
(そのために、フライト時の回転数よりも高めの回転数、低い負荷になるように、小さいダイヤで浅いピッチのプロペラを用いる、そうしないと、歪んで削られ、エンジン不調の原因となります)
 
最終的には、実際のフライト(ランニングイン)で、ニードル甘めのフライトから、実用のニードルの絞込みに至るところまでフライトを繰り返し、問題なければ慣らし運転は完了とみなすことができますね。
アタリが取れるに従って、運転での摩擦が小さくなり、出力も上がってきます。
 
ちなみに、 ランニングインで燃料切れでエンジンが停止するときに、綺麗に停止せず、
オエッという感じで停止する場合は、まだまだ、アタリが取れていない証拠になります。
 
まあ、かなり面倒くさいことを書いてしまいましたが、では、実際に、どの程度の燃料の量で慣らし運転が終わるの?
ですが、最新の精度の高いエンジンであれば、5タンク程度、で完了します。
(地上で3タンク、飛行で2タンク)
ヘリの場合は、かかっても5~7フライト程度で完了します。
これは、あくまでも、途中で落とし穴にはまらずに効率よく慣らし運転を行った場合になり、途中で落とし穴にはまった場合は、途中までに戻り、やり直し、へたしたら使えないエンジンを作り出してしまう可能性もあることをご理解ください。 
 
一方、Uコンのエンジンの場合は、最新の工作精度の高いエンジンと違い、また、材質もまちまちなので、やはり、テストベンチでじっくりと回してやって(30分以上)、それから、機体に搭載して慎重に進めたほうがいいでしょう。
 
 
是非、参考にしてみてください。

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