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各種空力特性の考察  造波抵抗をよく知らなかった疾風の空力設計

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飛行機の造波抵抗が問題となって世界的に知れたのは、第2世界大戦後の音速に挑むときの機体開発のときだった。
いわゆる、「エリアルール」というのがそれで、主翼のような大きな体積がある部分は、急激に体積が増えるため
いわゆる「造波抵抗」が増えてしまうことになる。
(ちなみに、造波抵抗は、船の設計ではとても有名ですね)
対策としては、主翼付近の胴体をほっそりと窪ませることでこれを回避することができるようになる。
ちなみに、「エリアルール」は、
1950年代に NACA(当時。現 NASA)のリチャード・ウィットカムが発見し、1955年9月に国家機密事項から解除された。
となっているので、戦後のお話になるのだが・・・
 
 
エリアルールのウィキペディアは以下のURLへ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB
 
 
実は、「疾風」の元設計となった機体、「鍾馗」では、すでに、この「エリアルール」を尊重した設計がなされていたことは、あまり世間では知られていないところだと思う。
なぜ?「鍾馗」では採用されていたのに、「疾風」では採用されなかったのか?
これは長年の疑問だった。
 
 
実は、模型飛行機を楽しむための、良い本 その8 で紹介した、「決戦機 疾風 航空技術の戦い」 碇 義郎著 で詳細に記述されていた。
 
答えは、「鍾馗」と「疾風」では、空力設計担当責任者が変わってしまっていたためだった。
「鍾馗」の空力設計担当責任者は、「疾風」の開発の前に会社を辞めてしまったのだ。
そのため、胴体部のくびれの意味が現場に充分に技術継承していなかったため、これが省略されてしまった。
仮に、「疾風」の空力設計担当責任者が変わっていなければ、迷わず胴体のくびれは廃止しなかったであろう。
廃止した理由は、「構造的に複雑になり、工作が大変」という理由が第一だが、「造波抵抗が減少する」というメリットが明らかになっていなかったことや、「渦が発生して抵抗が増えるのでは?」という推測も原因と思われる。
本では、数日かけてそのへんのやり取りについて具体的に書かれていたが、実に残念に思った。
 
 
仮に、「鍾馗」により、「エリアルール」ということが認められ、その有用性が証明されていたのであれば、日本人の快挙、となったのではあるまいか?と、本当に残念に思う。
 
もっとも、当時のエンジン出力では、明確な「効果」が認められるだけの実験はできなかっただろうし、時速600Km程度の速度では、効果も薄い(それでも効果はあったと思うが、差が小さいのでそれほど話題にならない?)ので、皆が気がつかなかったのであろう。
(とはいうものの、船の設計では、実はあたりまえの考え方なのだが)
 
 
ところで、「鍾馗」と同時期に同目的(いわゆるインターセプター(迎撃機))、同エンジンで開発された機体に「雷電」がある。
この雷電は、胴体のくびれなど無く、弾丸のような太い胴体に小さな主翼がついている。
 
これは、両者の航空力学上の見解の相違がよくわかる事例として、とても参考になると思う。
模型飛行機の世界でも、いわゆる「設計方針」というのは、それこそ様々存在している。
それらを勉強したり、好みの設計方針を見つけていったり、と、その楽しみは無限にあると思う。
 
 

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