高校時代の物理学、数学で、「軌跡」なんて勉強したことは覚えているだろうか?
はるかかなたの前なので、もうとっくに忘れたし、そんなことどうでもいいじゃん、なんて年になってしまったが、Uコンで機体設計をやるからには、そんなこといってられない、というところですね。
ここで学んだことの大切なことは、
・物体の軌跡を力学的に解析したら、働いている力が判明する。
・物体に力を加えたら、軌跡が相応に変化する。
そこには相関関係が存在している、ということなんですが。
ということで、四角宙返りもどきの運動方程式を単純化して解いてみました。
といってもコーナー旋回は省略、単純に上昇して降下して、という範囲になりますが。
コーナーターンは、いきなり直角に曲がる、という非現実的なことになっていますが、上昇、降下で、どのように変化するのか?について知るには充分です。
飛行半径は20m、飛行速度は25m/s(90Km/h)としていますので、代表的な60~75クラスに近いでしょう。
条件は、機体の推力と抵抗、重力と揚力は常につりあっていて、それ以外のエネルギーは増減しない、ただし位置エネルギーについては増減する、とします。
わかりやすく言うと、空気抵抗のないジェットコースーターはどのようになるのか?といったところでしょうか?
力学計算のタイミングは、1m進むごとに計算する方式です。
当然、上昇、降下のときは減速、加速し、水平飛行は一定の速度で飛行します。また、物理学では、空気抵抗のない、エネルギー損失がない場合は、上昇降下を繰り返しても
同一高度の飛行は同じ速度になるのですが・・・
さあ、計算してみましょう。
計算シートです。
速度変化のグラフです。
ワイヤーテンションと周回秒数のグラフです。
上昇で徐々に減速、降下で徐々に加速しているのがわかります。
いちおう、面倒なんで、球面ではなく、垂直面としているのはご愛嬌としてください。
45度の高度では、水平飛行の約75%まで減速しています。
水平飛行に戻った時点では、もともとの速度25m/sに戻ります。
(計算では戻らなかったのですが、これは1m単位で加速度の影響を計算しているからであって、この辺が微積分の難しいところなんですがね。この辺のことを語ると長くなるんで省略します。)
ここで理解できることは、「実際はこんな飛び方しないよね」ということです。
では、何が違うの?
ここで冒頭で書いた、軌跡と力の関係が出てきます。
こんな飛び方しないところは、必ず「力」が発生しているということが判明します。
では、その力ってなになの?ってことで、プロペラ?機体重量?機体抵抗?推力?エネルギー?
なんてことが考察できるようになってくるのです。
エンジンの場合は、上昇でそれほど減速せず、降下でもそれほど加速しません。
つまり、上昇時には重力に打ち勝つ推力を発生して上昇し、降下時には適度にブレーキがかかり降下している、ということが理解できます。
一方、スーパープライEP-Zの様子を見てみると、上昇での減速、降下での加速の度合いが、このグラフに近い傾向で飛行しているのがわかります。
より、一定速度で飛行したほうが、テンションの確保もしやすく、人間の感覚では飛ばしやすくなることは確かでしょう。
上昇しにくいのは、
1)速度の低下->プロペラ負荷増大->回転が落ちる->より大きな電流が流れる->回転の低下具合が抑えられる->推力が増大する
という順番でプロペラ回転が変化するのですが、それが充分に追いついていないとも考えられますし、
2)速度の低下->プロペラ負荷増大->回転が落ちる->より大きな電流が流れる->プロペラが失速気味になり、推力が上がらない、
の両面があると考えられます。
スーパープライEp-Zの場合は2)の要素が大きいように思うので、ピッチをわずかに下げれば、かなり改善できるのでは?と考えたわけです。
ちなみにエンジンの場合(パイプではない)は
3)機首が上を向く->タンクの液面が下がる->混合気が薄くなる->燃焼温度が上がる->点火タイミングが早くなる->トルクが増す->実質的にプロペラ回転があがる->推力が増大する
となりますが、結果としてモーターに比べはるかにプロペラの回転が上がります。
降下では
1)速度の増大->プロペラ負荷減少->回転があがる->より少ない電流が流れる->このパターンの場合、モーターでは十分にブレーキがかかりにくい
となると、降下は加速気味となります。
一方エンジンでは、
2)速度の増大->プロペラ負荷減少->回転があがる->エンジンはフリクションロスが大きい->プロペラの回転は上がりにくい->ブレーキとして減速しやすい
という特性になります。
つまり、電動では上昇の推力上昇は比較的素直に実現できる(それでもエンジンには追いつかない)が、降下時の加速を抑える効果はなかなか望めない、特性があるといえます。
ここを完全に制御するとなると、Gセンサータイマーだけではなく、アンプ自体の制御でも最適化が必要となるでしょう。
ガバナーモードでも追いつかないと考えられます。
そのような制御装置が開発されることを願いつつ、25クラス電動スタント機の設計では、一般的なタイマーとアンプで、どのように性能を引き出すのか?
に挑戦してみたいと思います。